乳児用液体ミルクとは、母乳の代わりに乳幼児の成長のために必要な栄養素を加えた液状の調整乳で、乳児用調製液状乳とも呼ばれます。粉ミルクと同様に母乳代替品であり、栄養組成も調乳後の粉ミルクと同様となっています。
乳児用液体ミルクは海外では広く普及していますが、日本においては一般に普及しておらず、2016年の熊本地震でフィンランドから支援物資として液体ミルクが届けられたことで注目が集まりました。当時は、乳児用の液体ミルクに関する規格や安全性を確保するための基準がなく国内では製造できない状況でしたが、2018年8月に厚生労働省の食品衛生法にもとづく「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」が改正され乳製品の1つとして調整液状乳が追加されたこと、また消費者庁の特別用途食品に母乳代替品として乳児用調整液状乳の区分が新たに設けられたことにより法整備が整い、国内でも製造・販売が可能となりました。省令改正を受けて2019年3月に国内メーカーによる製品が初めて発売され市場が立ち上がり、2022年2月時点では3社が市場参入しています。
液体ミルクは常温での長期保存が可能で、利用時に湯で溶かすなどの調乳が必要なく、容器から哺乳瓶に移すだけですぐに授乳できるという特徴があります。粉ミルクは湯で溶かす手間や時間がかかり授乳者の負担が大きいのに対して、液体ミルクは調乳の時間が短縮でき、夜間や外出先でも、また調乳経験の少ない人でも手軽に授乳することができるため、育児負担の軽減を目的に日常的な使用も増えてきています。哺乳瓶に液体ミルクを移し替えなくても、液体ミルクの容器に哺乳瓶の乳首を装着してすぐ飲ませることができるアタッチメントも開発されており、さらなる負担軽減を図ることで利用者の拡大が図られています。
女性の社会進出・共働き世帯の増加など社会が変化していく中で、育児の負担は大きな課題であり、液体ミルクはその解決ニーズに対応した商品となっています。今後は、母乳や粉ミルクをメインとしつつ、夜間や外出時などのシーンで液体ミルクを利用するといった併用・使い分けの形で利用が増加すると予想されます。
水のない場所でも授乳できることから、自然災害が頻発する日本では乳児用の食料の災害備蓄としても活用が期待されています。日常・災害時のどちらの利用にも適した製品が上市されています。
育児負担を軽減するといったメリットの訴求、液体ミルクの認知度向上による利用の増加、災害向けの備蓄としての需要増加から、市場は拡大が見込まれます。
本調査では、消費者庁の特別用途食品の許可を受けている乳児用液体ミルク(乳児用調製液状乳)の国内売上高を対象に市場規模を推計しました。
本調査結果の詳細は、JMAR が提供するリサーチプラットフォーム MDB Digital Searchに同レポートを収録し、ご提供しております。
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