「宇宙旅行」とは、各国の正式な資格を取得した宇宙飛行士ではない民間人が個人として宇宙空間へ行き、宇宙での滞在や体験を楽しむ旅行です。現在実現している宇宙旅行は、「軌道旅行」と「準軌道旅行」に大別されます。軌道旅行とは、国際宇宙ステーション(ISS)が地球を周回している高度400km以上の軌道に達して地球を周回したり、ISSにドッキングしたりして、数日間から1週間程度宇宙に滞在するものです。準軌道旅行は、宇宙空間と大気圏の境界線にあたる高度80~100kmまで上昇して、数分間の無重力体験や宇宙から地球を見るといった体験ができる旅行です。
民間人の最初の宇宙旅行者は、米・航空宇宙局(NASA)の科学者であったデニス・チトー氏で、2001年に自費でロシアの宇宙船「ソユーズ」に搭乗しISSに滞在しました。以後、2009年までに7名の民間人がISSに滞在する宇宙旅行を実施していますが、2011年に米国の宇宙船「スペースシャトル」が運用終了し、有人宇宙飛行の手段がソユーズのみとなって以降、宇宙への輸送能力の不足から民間人の宇宙への旅行は途絶えていました。
2020年に米国の民間企業であるSpace Exploration Technologies(SpaceX)の宇宙船が正式な運用に至り、2021年9月には自社の宇宙船による民間人4名のみによる軌道旅行を成功させました。SpaceXはNASAからISSへの物資輸送のほか宇宙飛行士の輸送を受託しており、同社の宇宙船開発により宇宙への人員輸送能力が向上することとなりました。輸送能力に余裕が出てきたことから、ソユーズの民間人に向けた座席販売が2021年に再開され、同年ソユーズに搭乗しISSに滞在する2回の宇宙旅行が実施されました。
準軌道旅行については、2021年7月に米国のVirgin GalacticとBlue Originがそれぞれ自社のスペースプレーン、弾道飛行用宇宙船での実施に成功しました。Blue Originは同年10月、12月にも打ち上げを実施し、民間人への旅行の提供実績を残しています。2021年に実施された準軌道旅行は創業者や招待客の搭乗も多くみられましたが、2022 年にはVirgin Galactic、Blue Originが本格的にサービスを開始することで市場拡大が見込まれます。
宇宙旅行は価格が数千万円から数十億円と高額であることから当面は富裕層による参加が中心とみられますが、旅行サービスの提供増加により市場は拡大し、2026年までに世界市場は1,000億円を上回る規模に達すると推計します。
本調査では、自費で旅行参加する民間人に対して宇宙空間までの輸送、宇宙空間での滞在を提供する旅行サービスを対象に、世界における市場規模を推計しました。
本調査結果の詳細は、JMAR が提供するリサーチプラットフォーム MDB Digital Searchに同レポートを収録し、ご提供しております。
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