答えのない未来に挑む
研究開発の意思決定を支えるリサーチ

サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社
プロセス技術開発部 主幹研究員 藤田 陽平

サントリーグローバルイノベーションセンターでは、サントリーグループ全体の研究技術開発を横断的に支え、未来の価値創造につながる先行開発を推進しています。研究テーマの探索や事業判断において、技術的可能性に加え、市場性や社会の変化を捉えるためのリサーチが重要な役割を果たしています。研究開発における情報活用の考え方や、MDBを活用した調査・検討プロセスについてお話を伺いました。

※SUNTORY WORLD RESEARCH CENTER(SWR)は、サントリーグループの多様な研究組織が集い、
社内外の知を交流させながら、新たな商品や事業につながる価値創造を目指す研究拠点です。

 

 

サントリーグループの未来を見据え、グループ横断で研究開発を支える組織

——サントリーグローバルイノベーションセンター、ならびに藤田様のミッションを教えてください。

サントリーグローバルイノベーションセンターは、サントリー全体の研究技術開発をグループ横断的に支える組織です。アルコール飲料、ソフトドリンク、健康食品をはじめとする、サントリーグループの幅広い事業領域に関わりながら、商品づくりや事業の成長につながる研究開発に取り組み、未来のお客様にとっての新たな価値創造を目指しています。
現在、当センターでは、「現行事業領域」「新領域」「基盤研究領域」の3つの軸で研究を推進しています。既存事業の成長を支える研究開発、新たな市場創出を目指す研究、そして世界最高水準の学術成果を目指す基盤研究をバランスよく進めている点が、当センターの特徴です。

その中でも、私が所属するプロセス技術開発グループは、事業部門と密接に連携しながら、商品づくりや事業の成長を支える技術開発に取り組んでいます。

私自身はビールの商品開発をバックグラウンドに持っていますが、グループ内には多様な専門性を持つメンバーが在籍しており、ビールに限らず幅広いテーマに関わることができます。自分の専門領域を活かしながら、分野を横断して新しいテーマを立ち上げていける点に、この仕事の面白さを感じています。

サントリーの研究開発活動を象徴する存在の一つに、青いバラがあります。青いバラは、かつて不可能の象徴と言われていましたが、サントリーは長年の基礎研究を通じて、その開発に挑み続けてきました。不可能と思われることにも挑戦し続ける姿勢には、サントリーの「やってみなはれ」の精神が表れており、当センターの研究開発にも受け継がれていると感じます。

新しい価値は、思いつきだけでは生まれない

——研究開発において、情報はどのような役割を果たしているのでしょうか。

研究開発活動では、現場・現物をしっかり確認し、自分の目で確かめながら情報を集めることを大切にしています。

サントリーグローバルイノベーションセンターには、新しい価値の創出に向けて、将来につながる研究テーマを見いだしていく役割があります。新しいテーマは、思いつきだけで立ち上げられるものではありません。本当に取り組むべきテーマなのかを見極めるために、さまざまな情報を集め、時間をかけて議論を重ねながら検討を進めています。

その初期段階で欠かせないのが、十分な情報収集です。新しい発想は、ロジカルな積み上げだけでなく、思いがけない情報との出会いや、そこから生まれる気づきによって形になることもあります。自分の知らない領域や想定外のテーマに触れることは、発想を広げ、新たな価値創出につなげるきっかけにもなっています。
プロセス技術開発部 主幹研究員 藤田陽平様

アイデアを商品や事業価値につなげていくためには、技術的な可能性に加え、市場性や事業性も踏まえながら、どのような価値をお客様に届けられるのかを具体的に描くことが重要だと考えています。単なるひらめきにとどまらず、客観的な情報をもとに仮説を深めていくことで、テーマとしての方向性がより明確になります。

また、社内で検討を進める際にも、客観的なファクトに基づいた説明が欠かせません。市場動向や関連するデータを参考にしながら検討内容を整理することで、関係者との共通理解が深まり、次のステップに進めやすくなると感じています。その後も、検討と検証を重ねながら、目指す価値の実現に向けて取り組んでいきます。

こうした一連のプロセスを支える情報基盤として、MDBは非常に有用であり、日々の業務において大変心強い存在だと感じています。

研究内容を伝わる言葉へと翻訳し、人を巻き込む

——研究開発者がリサーチを行う意義についてどのようにお考えですか。

研究開発者が自らリサーチを行うことは、非常に重要だと考えています。研究開発では、専門的な技術やデータをもとに検討を進めますが、その成果がどのようなニーズにつながり、どのような価値を生み出せるのかまで考えることで、研究の意義がより明確になります。

また、その意義を周囲にわかりやすく伝えることができれば、関係者の理解や共感を得ながら、研究をさらに前に進めていくことができます。研究内容を専門的な言葉のまま伝えるのではなく、相手に伝わる言葉へと翻訳することも、研究開発者に求められる大切な役割だと感じています。

一方で、市場情報の収集や整理は、研究者にとって必ずしも得意な領域とは限りません。技術を深く掘り下げる力と、市場性や社会の流れを捉えながら価値に結びつけて考える力は、少し異なる面があるためです。

だからこそ、必要な市場情報や客観的なデータに素早くアクセスできる環境は、研究開発を進めるうえで大変有用です。裏付けとなる情報があることで、研究の可能性をより説得力を持って伝えることができ、関係者を巻き込みながら価値創出につなげやすくなると感じています。

プロセス技術開発部 主幹研究員 藤田陽平様

私自身、研究と事業、技術と価値をつなぐ役割を担う機会が多く、リサーチの重要性を強く感じています。専門領域の知見に加えて、市場性や社会の流れを理解しておくことで、研究開発の方向性をより具体的に描き、関係者との議論もより建設的に進めることができます。

MDBは、そうした議論に必要な市場情報を効率よく把握し、検討の精度を高めるうえで非常に有用な存在です。客観的な情報をもとに会話に臨むための土台を整えてくれる情報基盤として、大きな価値を感じています。

情報収集にとどまらない、伴走型のリサーチ支援

——MDBを使っていて感じるメリットを教えてください。

情報収集ツールに求めているものは、単に情報を探すことだけではありません。文献や論文などを通じて得られる情報もありますが、私たちが本当に必要としているのは、研究や事業の検討に活用しやすい形で、必要な情報が整理され、一定の品質でまとめられていることです。

その点で、MDBのサービスは非常に有用だと感じています。情報を表面的に集めるだけではなく、目的に応じて丁寧に調査・整理したうえでアウトプットしていただける点に、大きな価値があります。単なる情報収集の効率化にとどまらず、検討に使える質の高い情報として提供いただけることが、非常にありがたいと感じています。

また、市場面だけでなく、技術面も含めて調査いただける点も大きな魅力です。新しいテーマを検討する際には、市場の観点だけでも、技術の観点だけでも十分ではなく、両面をあわせて見ていく必要があります。MDBでは、その両面を踏まえた情報整理ができるため、議論や判断を進めやすくなると感じています。
技術的な要素が入ると、調査を依頼する際のコミュニケーションが難しくなることもありますが、こちらの意図や背景を踏まえながら安定して対応いただける点も、大変心強く感じています。単に情報を集めていただくだけではなく、背景や論点を理解したうえで伴走いただける安心感があります。

近年は、情報の整理や要約、論点を明確にする手段としてAIの活用も広がっています。一方で、研究開発や事業検討に用いる情報については、内容の正確性や信頼性を見極めることが重要です。AIを活用して論点を整理し、そのうえで専門的な調査や人の目による確認を組み合わせるなど、それぞれの強みを活かしながら活用していくことが現実的だと考えています。

同社を担当する情報コンサルタント 室田 由記

周辺情報から、次の市場機会を見いだす

——MDBはどのように活用されていますか。

私の場合は、比較的早い段階で相談することが多いです。まだ論点が完全に整理できていない段階でも、現時点でわかっていることを共有し、会話を重ねながら検討の方向性を固めていきます。私自身は、書きながら整理するよりも、話しながら考えを深めていく進め方が合っており、そのほうが結果的に早く前に進められると感じています。

そうした意味で、気軽に相談できることは非常にありがたいです。最初から依頼内容を完璧に定義しなくても、議論の前提となる情報を得るための相談から始められるため、検討の立ち上がりがとてもスムーズになります。

また、対応範囲の広さにも助けられています。市場や技術に関する調査はもちろん、テーマによっては知財に関連する観点も含めて相談できる場合があり、幅広い視点で検討を支えていただける点は大きな強みだと感じています。そのうえで、スピーディーに対応いただけるため、費用対効果の面でも非常に有用だと感じています。

最近も、海外市場に関する検討の場面でMDBのリサーチが役立ちました。検討対象となる市場について、直接的な市場規模データが十分に存在しないケースでしたが、関連する周辺データや事実を丁寧に整理いただいたことで、市場の可能性を多面的に考えることができました。

新しいテーマでは、ニーズがまだ明確なデータとして表れていないことも少なくありません。また、すでに数字として把握できる市場だけを見ていては、新しい機会を捉えにくい面もあります。だからこそ、周辺情報を組み合わせながら仮説や選択肢を広げていくリサーチには、大きな価値があると感じています。

不確実な未来に、意思を持って向き合う

——未来の製品につながる技術を先行開発するうえで、どのような視点を大切にされていますか。

新しい価値や未来のあり方については、誰も明確な答えを持っているわけではないと思っています。だからこそ、最後は「自分たちはこの方向を目指すのだ」と、意思を持って決めることが必要です。

一方で、その意思決定は、十分な裏付けのないまま進めることはできません。現時点で見えているファクトを丁寧に積み上げながら、「こういう未来を実現したい」という考えを、少しずつ確かなものにしていくことが重要だと考えています。
もちろん、どれだけ準備をしても不確実性がなくなるわけではありません。それでも、自分たちはこの未来を目指すのだと自信を持って言い切るためには、土台となる情報が欠かせません。その意味で、情報収集は意思決定を支える重要な基盤だと捉えています。

現在の業務においても、数年先を見据えて進めているテーマがあります。一方で、既存事業の延長線上にあるテーマだけではなく、10年後を見据えて「こういう未来を実現したい」「こういう技術を確立しておきたい」と示していくことも、研究開発には求められると感じています。

中長期の未来像には、どうしても予測の要素が含まれます。ただし、その予測も、現時点での正確なデータや客観的な情報があってこそ意味を持ちます。足元のファクトと将来に関する情報を捉えながら、根拠を持って未来の方向性を描いていくことが大切です。

また、その前提を更新し続けることも重要です。世の中の状況や情報は常に変化しているため、継続的に新しい情報を取り入れなければ、前提がずれたまま検討を進めてしまうことになりかねません。情報を集めるだけでなく、定期的に見直し、考えをアップデートしていくことが欠かせないと感じています。

サントリーグローバルイノベーションセンターは、未来を誰よりも考え、その実現に向けて挑戦していく組織です。だからこそ、実現したい未来を描くだけでなく、それを支える基盤情報もしっかりと固めながら、自信を持って前に進んでいきたいと考えています。

プロセス技術開発部 主幹研究員 藤田陽平様

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