■金属3Dプリンター市場概況
・2025年度の世界の金属3Dプリンター市場は2,500億円となる見込み。
・金属3Dプリンターでは複雑な形状の造形、造形品の一体成型などが可能。
・部品点数の削減、リードタイムの短縮、多品種少量生産を可能にする、製造業における革新的な技術。
・航空宇宙分野、自動車分野、医療分野など付加価値の高い製品を中心に製造業への導入が進む。
・日本でも産官学連携プロジェクトなどを後押しに実用化が加速し市場の拡大が期待される。
金属3Dプリンターは、CADなどで作成した 3 次元(3D)の設計データをもとに、レーザーや電子ビームを使って材料の金属粉を固め、立体の形状に積み上げて造形品を作る装置です。金属3Dプリンターでは、切削や鋳造などの加工方法では製造が難しい複雑な形状を造形することができるため、従来は複数の部品を組み合わせて作成していたものを、 1 つの造形品として一体成型することなどが可能となります。また、切削や鋳造などの加工方法では製造品ごとに金型な どの装置や設備が必要であり大量生産が前提となっていますが、金属3Dプリンターでは設計データと造形材料があれば製造が可能であるため、多品種少量生産や一品物の生産が容易になります。このような特徴から金属3Dプリンターは、大幅な部品点数の削減、リードタイムの短縮、在庫の削減などを可能にする、製造業における革新的な技術になると期待されています。
金属3Dプリンターは、造形の精度や速度の技術進歩に伴い、欧米の製造業を中心に実際の製造現場への導入が徐々に進んでいます。航空宇宙分野で使用される素材単価の高い部品の製造で活用されているほか、自動車分野では高級車部品の量産、部品の試作、医療分野では人工関節の部品やインプラントなどの製造に使用されています。
製造現場で利用される高価格・大型の金属3Dプリンターだけではなく、設計部門などオフィス環境での使用も想定し、 また小型品の造形に用途を絞り低価格化を図ったデスクトップ型機が2017年頃から登場し、大きく売上を伸ばしています。直径25cm程度のものを造形できる中型機が 5,000万円以上、50cm以上の造形が可能な大型機は1億円以上という価格帯の中、デスクトップ型は5,000万円を下回る低価格を実現し、需要を獲得しています。
2019年度の市場を地域別にみると、金属3Dプリンターの市場は欧州と北米が中心となっており、両エリアで60%以上の売上を占めています。日本は欧米に比べ、製造業への金属3Dプリンターの導入が遅れており、日本の市場が世界に占めるシェアは10%に満たない現状です。しかし、2014~18年度にかけて経済産業省主導のもと、産業用3Dプリンター技術を開発する産官学連携プロジェクトが実施され、装置や材料の金属粉末の開発に関わるメーカー、ユーザー企 業、大学などの研究機関が同プロジェクに参加しました。2019 年度以降、その成果の実用化が進み、今後は国内市場においても需要の拡大が期待されます。
本レポートでは、世界の金属3Dプリンターの市場規模を推計いたしました。本調査結果の詳細は、JMAR が提供するリサーチプラットフォーム MDB Digital Searchに同レポートを収録し、ご提供しております。
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