■水中ドローン市場概況
・2025年度の水中ドローン国内市場は70 億円となる見込み 。
・水中ドローンは陸上・船上から遠隔操作する小型のROV(無人潜水機)で、海底、ダム、洞窟等の水中の撮影や調査に用いられる。
・軽量化、低価格化、操作性の向上などの高性能化が進められ、水中ドローンの用途が広がる。
・ダイバーによる調査・撮影よりも安全性が高く、安定した撮影が可能であることから、ダイバーの代替需要が拡大。
・産学官の連携による普及促進、 建設業や海洋調査での利用拡大が期待され、市場は拡大の見込み。
ROVとはRemotely Operated Vehicleの略で、遠隔操作型の無人潜水機を指します。操縦者は陸上・船上から遠隔操作により機体を操作する方式であり、水中は地上に比べて電波が伝わりにくい環境であることから、ROV はケーブルを用いた有線接続によって操作されます。機体にはカメラが取り付けられており、海底、ダム、洞窟等の撮影や調査に用いられます。空中において遠隔操作するドローンとの類似性から、小型のROV は「水中ドローン」とも呼ばれています。
本調査では水中ドローンとして、本体重量がおおむね100kg以下のROV 製品を対象とし、市場規模は機体本体とケーブ ルやコントローラー等の付属品を合わせた国内販売金額を対象に算出しました。ROV は1980 年代から利用されていますが、従来のROVは重量が数百kgに及び、機体価格は高額、運用するためには母船となる大型船が必要で高額なコストがかかるといった課題があり、石油やガス田開発のための海底調査を中心とした限定的な需要にとどまっていました。
近年は小型軽量化、低価格化に加え、操作性の向上などの高性能化が進められ、小型の ROV、すなわち水中ドローンの利用機会が広がっています。 水中ドローンは船底やダムなどの水中構造物の調査・点検において、ダイバーの代替として需要が拡大しています。 ダイバーは、潜れる深さや時間の制限、悪天候時の潜水が難しいなど安全面での制約がある上、近年では高齢化によ る人手不足が深刻になっています。水中ドローンを利用する場合は、操縦者は地上や船上で操作するため安全面のリスクが小さいこと、またダイバーが水中撮影を行う場合に比べブレが少なく安定した撮影が可能、用途に応じてソナー等の機器を搭載することができるというメリットもあります。
国土交通省が河川・港湾における水中構造物の調査・点検に 水中ドローンの導入を推進しており、建設業を中心に水中ドローンの導入がさらに進むとみられます。 建設業の他にも、海上保安庁や気象庁などの官公庁や、大学等の研究機関、漁業事業者などが水中ドローンを導入 する事例もみられます。日本の領海と排他的経済水域は世界第 6 位の広さを持つ一方で、海洋資源調査はあまり進んでいないといわれ、海底調査での水中ドローン活用の余地は依然として大きいとみられます。今後は産学官の連携によ る水中ドローン普及推進や活用事例増加にともなう認知度向上も期待され、市場は拡大傾向での推移が見込まれます。
本レポートでは、国内における水中ドローンの市場規模を推計いたしました。 本調査結果の詳細は、JMAR が提供するリサーチプラットフォーム MDB Digital Searchに同レポートを収録し、ご提供しております。
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