
新規事業開発における市場調査のポイント
IT、ネットワーク技術の発達、地球温暖化、脱炭素・SDGsなどに代表される世界的な政策・規制などにより世の中の変化のスピードが速くなっており、消費者の嗜好や意識も大きく変わってきています。この変化の中で、企業にとっては、いかに成長分野に移行するかが、ますます重要になっています。成長の波に乗るための新規事業開発は、企業にとって大きな課題です。この新規事業における市場調査の方法・ポイントについてご紹介します。
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目次[非表示]
- 1.新規事業における市場調査
- 1.1. 市場調査の必要・重要性
- 1.2.市場調査とは?
- 1.3.市場調査をするために必要な準備
- 2.市場調査の種類・方法
- 2.1.①デスクリサーチ(文献調査、二次情報公開データ収集)
- 2.2.②アンケート調査
- 2.3.③訪問・インタビュー調査(一次情報収集)
- 2.4.④データ解析
- 2.5.⑤観察調査(一次情報収集)
- 3.市場調査の方法・手順
- 4.市場調査のポイント、注意点
- 4.1.新規事業においての調査ポイント
- 4.2.市場調査の注意点
- 5.MDBの市場調査
- 5.1.MDBはこんなサービス
新規事業における市場調査
市場調査の必要・重要性
一般的に、新規事業を立ち上げるステップとしては、大きく3つのステップがあります。第1のステップは社会・経済などの外部環境分析、自社の弱み・強みなどの自社分析と、現状把握です。第2のステップは、ターゲットを選定し、事業コンセプト、ビジネスモデルを作る課程です。その先の第3ステップは、新規事業実施にあたっての事業計画、開発費用・売上試算、マーケティング戦略などのビジネスプラン・アクションプラン策定です。プラン完成後は、事業開始といった流れです。
第2のステップにおけるターゲット選定、事業化コンセプトの局面で、仮説検証、アイディアの評価など行うわけですが、こうした企画を作成するにはベースとなる情報・FACTが必要です。意志決定のためには、証拠・エビデンスが必須であり、ターゲットとなる市場の調査は重要なプロセスです。
新規事業開発の流れ
市場調査とは?
ターゲットとなる市場の調査、つまり「市場調査」は新規事業開発のプロセスにおいて、重要なプロセスですが、この「市場調査」とは具体的に何でしょうか。
そもそも「調査」とは、課題解決のアクションや意志決定のために必要な情報収集や分析をすることです。新規事業をどこの市場にするのかを意志決定するには、
・対象となる市場の大きさがどのくらいか
・顧客数は多いのか
・右肩上がりの成長性が高い分野なのか
・低成長ではあるものの、参入企業が少なくて、勝機が見込まれるか
などの裏付けになる情報が必要です。市場調査は、このターゲット市場を選定するための必要な情報収集、分析になります。
市場調査で収集する情報は、市場の大きさを把握するための、市場規模、市場規模予測、市場の成長率、そして業界構造を理解するためのサプライチェーン、ビジネスモデル、法規制、競合企業動向、企業シェア、またユーザー・顧客動向、顧客ニーズなどです。業界の特性によって調査内容・項目も変わります。
市場調査をするために必要な準備
具体的な市場調査を始める前には、ある程度どういった分野を想定して調査を進めるかという方向性を決めてからでないと情報収集を始めることができません。どのような分野を選ぶかについては、自社のおかれている現状を把握して新規事業創出のアイデア・企画のベースをイメージしていくことになりますが、この部分は新規事業のはじめのステップの部分になります。ここでの分析では、PEST分析、3C分析、SWOT分析等がよく使われています。
PEST分析は、外部環境を分析するフレームワークです。社会環境変化の速度が速くなっている現在、高成長を実現している企業は時代の変化をとらえた事業を展開しています。
・PEST分析:外部環境・社会環境変化を政治・経済・社会・技術の軸で分析
・3C分析:自社の経営資源を分析し、市場・顧客の定義・確認、競合を分析
・SWOT分析:内外部要因の視点から強み、弱み、機会、脅威という4つのカテゴリー分析
市場調査の種類・方法
市場調査の手法は様々ありますが、代表的な調査方法としては、
①デスクリサーチ(文献調査)、②アンケート調査、③訪問・インタビュー調査、④データ解析、⑤観察調査の5種類があります。
①デスクリサーチ(文献調査、二次情報公開データ収集)
官公庁・業界団体の統計・資料、WEB、新聞、雑誌、調査会社など既に公開、公表されている情報を収集する方法です。
②アンケート調査
アンケートの質問について多数の人に回答してもらい、それを集計してデータ・情報を収集し、解析します。インターネットのリサーチシステムを利用してアンケート実施することが主流です。対象者すべてにアンケートを取る場合は全数調査と呼ばれます。代表的な全数調査は、国勢調査です。一方、対象者のなかからサンプルとして抽出した対象者のみへの調査はサンプル調査と呼ばれます。
③訪問・インタビュー調査(一次情報収集)
対象者を訪問面談、WEB面談、電話等で、インタビューすることにより実態を把握する手法です。
④データ解析
POSなどの購買履歴、サービス利用履歴、Webログなど蓄積された大量のデータを解析する手法です。
⑤観察調査(一次情報収集)
対象者・物の行動・動作、施設の実態など観察・記録する手法です。
※二次情報・・・既存にある情報、公表、公開されている情報のこと。
一次情報・・・新規に収集、作成することが必要な情報のこと。
これらの調査手法を、組み合わせることによって、仮説設定、仮説検証の情報収集・分析が精緻化されますが、現在のビジネスシーンでは、調査内容が何であれ、大抵の人は、Googleなどのインターネットの検索エンジンを利用して情報収集を始めます。この検索エンジンを使った情報収集は、公開・公表データ情報を調査することなので、デスクリサーチの手法になります。
デスクリサーチは、既存の公開・公表データが対象なので比較的費用もリーズナブルですが、その他の調査手法は、調査対象をどのくらいの量にするかによって費用がかわってきます。また、調査実施を担当するスタッフ数、時間により人件費も変動します。
市場調査の方法・手順
目的確認
調査とは、課題解決のアクションや意思決定のために必要な情報収集や分析をすることですから、どんなアクション・意思決定のための調査か目的をしっかり設定することが重要です。情報収集をしているうちに、目立つ情報、大量に出てくる情報に関心が向いてしまうことがあります。その際には、調査の目的に立ち返って見直しを図ることにより、無駄な情報に惑わされることがなくなります。
調査設計 調査項目と調査方法の選定
例えば、再生エネルギー市場について考えてみましょう。「今後日本においても再生エネルギーは重視され、風力発電は高い成長が見込まれている」という仮説があり、この市場に参入すべきかどうかの意思決定のための調査の場合、どういった項目・内容の情報を収集するかです。以下が調査設計の例になります。市場の大きさ、市場の成長性、主要企業、業界構造といった基本的な項目で設定した内容です。
再生エネルギー市場調査の調査設計例
調査項目:日本の再生エネルギー市場について
日本の電力需給の推移(過去5年)、需要予測(5年後、10年後)
電源別(水力、火力、原子力、再生エネルギー種類別)、地域別統計、
電源別発電コスト、風力発電所推移
業界構造
主要企業の動向(電力会社、新電力会社)
売上(セグメント別)推移、再生エネルギー・風力発電への取り組み状況
国の政策、法規制動向
新興企業の動向、業界トピック 等、、、、、
調査項目が決まりましたら、その情報収集をするためにどのような調査手法をとるか検討します。一般的な調査の場合、
第一ステップ・・・デスクリサーチ
第二ステップ・・・アンケート調査や訪問インタビュー調査、データ解析など
といった流れになります。
デスクリサーチで、公開情報を調査し内容を整理分析し、デスクリサーチで入手できないような公開されていない情報、インタビューやアンケートをとらないと入手できない情報が必要な場合は、アンンケート調査や訪問インタビュー調査を行います。
調査のステップ
★必要な情報によって、調査の手法が変わります★
調査実行・情報収集
ここでは、調査手法の中でも、第1ステップで行うことが多いデスクリサーチの調査実行、情報収集について紹介します。
調査にあたっては、まず調査項目にそって、調査対象となる情報源を選択します。デスクリサーチの情報源としては、官公庁・業界団体データ、シンクタンク・金融機関発行資料、民間調査会社資料、専門誌、専門業界サイト、特許・技術などの専門データベースサイト等ありますが、各種の情報源の特徴をとらえて、情報源を選択します。
情報源を選択したのちは、実際の情報収集、検索に移ります。Googleなどのインターネットの検索エンジンで感触を掴むというのも方法の一つです。検索に使うキーワードを選定するにあたっては、業界内だけで通じる専門用語、表現などがあるので注意が必要です。
比較・分析・まとめ
デスクリサーチの場合、入手した特定市場の市場規模データであっても、複数の情報源で違う数字を出している場合もあります。調査概要であるデータの作成方法、調査対象数や発行元など確認し、データの信憑性をチェックします。また幅広く情報を収集することによって、相互の情報を確認することにより、各データの正確性が判断できます。
入手した数値情報は、集計し、企業売り上げなど成長率を計算するなど、比較できるような表を作成し、分析します。同一内容、表現が違っていても類似の内容は、カテゴリー別にまとめ整理します。
比較・分析した内容は、調査目的にそって、報告書にとりまとめます。情報の関係性、原因、結果といった因果律がわかるように、結果の内容を配置することにより一連のストーリーをつくることができれば、説得力を持つ調査結果となります。報告書のレイアウトも、見やすさを重視し、グラフや表などわかりやすいビジュアルデータ・情報を入れることも重要です。
市場調査のポイント、注意点
新規事業においての調査ポイント
新規事業は、従来と同じことを行っていても新規事業にはならないので、顧客であるユーザーの適切なニーズを発掘し、新しい切り口で考える必要があります。ニーズを発掘するには、変化の兆しを読み取り、先入観にとらわれない事実の把握が重要です。多くの情報に触れることにより、多角的な視点を持つことができます。情報が多ければ多いほど、対象の実態に近づくことができます。常に市場の変化をとらえて仮説をたて、検証を繰り返し、的確な情報を入手しましょう。
★新規事業においての調査ポイント★
【変化をとらえて仮説を立て、検証を繰り返す】
新しい切り口、市場の変化をとらえるには、日々様々な情報源にアクセスできるようアンテナを張っておくことも必要です。
★参考となる様々な情報源からのデータ例★
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市場調査の注意点
市場調査の難しい点は、意志決定に必要な、求めている情報やデータがあるかどうかの見極めです。
デスクリサーチで、官公庁の統計類、民間調査会社のレポート等で必要な情報がある場合もありますが、該当がない場合もあります。新規事業に活用できる信憑性のある既存の公開・公表データを見逃し、費用と時間をかけてアンケート調査・インタビュー調査等を行ってしまうとコストが高くなってしまいますので注意が必要です。
デスクリサーチであれば、該当情報がない場合、切り口を工夫して代替の統計などのデータを使う方法もあります。情報収集に時間をかける余裕がない、調査に注力するスタッフがいない場合は、専門家に相談するというのもいいでしょう。第一ステップであるデスクリサーチをしっかりと漏れなく行うことが、調査の基本です。
MDBの市場調査
MDBはこんなサービス
MDB(マーケティング・データ・バンク)は、世界中のビジネス情報をワンストップで入手できる国内最大規模のビジネス情報提供サービスです。調査に必要な、官公庁資料、業界団体資料、新聞雑誌、シンクタンク・金融機関、民間調査会社資料、業界誌・専門誌など独自に蓄積した50万点以上の資料を所蔵しています。MDBの所蔵資料が検索できるデータベース(Digital Search)、ライブラリを完備していますので資料を直接手に取ってご覧になることも可能ですし、お手元のPCから資料をダウンロードしていただくことも可能です。
また、MDBの情報コンサルタントに調査のご相談をいただくことも可能です。調査設計からご相談に乗り、情報収集のノウハウと豊富な経験をもとにしたデスクリサーチを提供、案件によっては各種の調査も提案させていただきます。また、新規事業開発の専用ワークショップなども展開していますので、ご興味ある方はぜひお気軽にお問合せください。