カーボンニュートラル・脱炭素経営への取り組み事例の調べ方を徹底解説!
気候変動問題に対する国際的な協定「パリ協定」では、世界共通の長期目標として、21世紀後半にカーボンニュートラルの実現を掲げており、カーボンニュートラルを推進する動きが世界的に広がっています。日本政府も2020年に、2050年のカーボンニュートラル実現を目指すと宣言、2021年には地球温暖化対策推進法の一部改正を行うなど国を挙げてカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを推し進めており、今後の設備投資戦略や中長期の経営計画を策定される方の中には、カーボンニュートラル・脱炭素経営が今後どのように進められていくか、他の企業の取り組み状況や課題等について情報収集を行っているのではないかと思います。
当コラムでは、そのようなビジネスパーソン向けに、カーボンニュートラル・脱炭素経営の取り組み事例に関する最新情報と、その収集方法について、解説していきたいと思います!
目次[非表示]
- 1.カーボンニュートラルとは?
- 2.カーボンニュートラル達成に向けての取り組み事例の調べ方は?
- 2.1.インターネット上のオープン情報から調べる
- 2.2.官公庁統計、業界団体情報から調べる
- 2.3.業界専門情報から調べる
- 2.3.1.専門業界誌・調査会社等から調べる
- 2.3.2.個別企業情報
- 2.4.市場調査会社に新たに調査を依頼する
- 3.カーボンニュートラルの取組事例を知るためのおすすめ情報源3選!
- 3.1.おすすめ情報源① 世界の脱炭素・カーボンニュートラル動向
- 3.2.おすすめ情報源② カーボンリサイクルCO2削減関連技術・材料市場の現状と将来展望 2022
- 3.3.おすすめ情報源③ 2023 CSR企業総覧 ESG編
- 4.まとめ
- 5.関連記事のご紹介
カーボンニュートラルとは?
まず、カーボンニュートラルについて取り組んでいる企業がどれくらいあるかを調べてみました。
カーボンニュートラル・脱炭素経営への取り組み状況
国際的イニシアティブ「RE100」は、使用電力を100%再生可能エネルギー発電で賄うことを推進しています。加盟条件として年間消費電力量が100GWh以上(日本企業は特例として50GWh以上に緩和)、もしくは50GWh未満でもグローバルまたは国内で認知度、信頼度が高いなど国際的、地域的に影響力を持っている企業が対象となることから、グローバルに活躍する大企業が中心ですが、脱炭素化経営に取り組む企業が参加しています。
日本の企業がどれだけ参加しているかを見ると、世界全体で23ヵ国、378社のうち、日本は72社で、アメリカに次いで世界で2番目に多く参加していることが分かります。
※2022年9月1日現在
出所)RE100に参加している国別企業数 環境省WEBサイトhttps://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/RE100_joukyou.pdf
カーボンニュートラル達成に向けての取り組み事例の調べ方は?
次に、カーボンニュートラル達成に向けての取り組み状況を、自分で収集する場合にどんな方法があるのか?について解説します。
カーボンニュートラル達成に向けての取り組みを調べる方法としては、①インターネット上のオープン情報から調べる、②統計情報から調べる、③専門業界情報から調べる、④市場調査会社に新規調査を依頼する、の4つの方法があります。
インターネット上のオープン情報から調べる
Googleなどのウェブブラウザで「カーボンニュートラル 取り組み」、「脱炭素経営 取り組み」などのキーワードで検索すると、多くの記事情報がヒットします。この記事情報を辿っていくと、国や業界団体、シンクタンクが発表している無料の調査報告書や、市場調査レポートの発行元がカーボンニュートラル関連のエネルギー設備やシステムの市場について発表したプレスリリースなどが見つかります。これらの情報を見ることで事例や周辺市場の動向はどなたでも把握できると思います。
官公庁統計、業界団体情報から調べる
信頼できる情報源としては、第一に国の計画やロードマップがあげられます。その次に、カーボンニュートラルに取り組む企業が加盟している業界団体の情報です。該当の情報があれば、そこで国全体、業界全体としてカーボンニュートラル、脱炭素経営に向けてどのように進めていこうと考えているかといった情報が入手できます。また、先進的な取り組み事例など、事例を取りまとめているケースもあります。
インターネット等で、カーボンニュートラルや脱炭素といったキーワードで業界団体や関連の官公庁サイトを確認、国の計画や取り組み事例集など、まとまった情報があるかを調べます。
官公庁・国際機関
カーボンニュートラルについては政府が2020年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表しており、企業の取り組みを後押ししています。経済産業省は各省庁と連携を取り、カーボンニュートラルの実現という長期的な目標を達成する為に、「グリーン成長戦略」を策定、2050年までの取組み工程をロードマップにし、インターネットで公開しています。環境省では脱炭素経営に関する注目トピックスや関連サイトの紹介など、関連情報にアクセスする為の入り口としてポータルサイト「脱炭素ポータル」を開設しており、基本情報や最近の動向をおさえるのにおすすめです。
国際機関としては、先でもご紹介している国際的イニシアティブ「RE100」が参加企業の再エネ利用状況などを取りまとめたレポートを毎年作成しており、WEBサイトよりダウンロードすることができます。
業界団体
日本の大手企業を中心に構成された日本経済団体連合会では、「経団連カーボンニュートラル行動計画」を公開しています。この資料では、各業界団体のカーボンニュートラルに向けた基本方針・マイルストーンの概要、2020年度実績について、フェーズ1(2020年度)の目標達成率、フェーズ2(2030年度)目標のフォローアップ状況などを網羅的に確認することができます。
RE100の対象企業の基準(年間消費電力量が50GWh以上等)から外れた企業を対象とした「再エネ100宣言」を主催する再エネ100宣言 RE Action協議会では、参加団体の取り組み事例や掲げる目標値などをまとめてみることができます。
業界専門情報から調べる
専門業界誌・調査会社等から調べる
カーボンニュートラルの話題についてはビジネス誌などでも取り上げられていますが、環境関係の雑誌・新聞で取り上げられることが多いです。「環境 新聞」、「環境 雑誌」などで検索すると、専門業界紙誌のサイトがみつかりますので、そこでカーボンニュートラル、脱炭素経営の情報を検索するという方法もあります。ヒットしてきた環境ビジネスオンライン、日経ESGなどのサイトでも、一部有料会員限定の記事などもありますが、最新のニュースを確認することができます。
カーボンニュートラルは話題のテーマですので、カーボンニュートラル関連技術やエネルギー設備についての調査レポートが発刊されています。価格相場は1冊数万円~数十万円するものまでさまざまですが、カーボンニュートラルを達成する為に必要となる設備や技術の状況を把握するのに購入を検討されてもよいかもしれません。
個別企業情報
「RE100」参加企業は、再エネルギー利用に関する目標や戦略、ロードマップ、電力消費量や再エネ購入量、再エネ発電量について毎年の進捗報告が必要とされています。その為、話題になっている企業のサイトや、RE100参加企業の決算発表情報などを確認すると、有用な情報が記載されています。例えば、日経ビジネスに掲載された「脱炭素経営ランキング」トップのトヨタは、2021年3月期 決算説明会でカーボンニュートラル実現に向けたトヨタの技術と戦略についての取組み状況を報告しています。
欧州委員会が企業持続可能性開示指令案を2021年4月に発表するなど、世界的な情報開示推進の流れを受け、日本でも、従来より温室効果ガスを多量に排出する企業を対象に毎年度排出量の報告が義務づけられていましたが、金融庁が2023年度からの有価証券報告書において、気候変動関連情報開示の義務化の検討を進めており、今後個別企業から発信される情報量は多くなると考えられます。
市場調査会社に新たに調査を依頼する
先に紹介した方法で期待する粒度の情報が入手できなかった場合、また情報が多すぎて取りまとめるのが難しい場合には、市場調査会社にアドホック調査を依頼するという選択肢もあります。公開情報を幅広く集めて、整理・分析するということに加え、有益な情報を保有する業界関係者・有識者等を探索し、インタビューを通してオリジナルな情報を収集し報告する形式をとっており、一般では取得が難しい情報にリーチできる可能性があります。
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カーボンニュートラルの取組事例を知るためのおすすめ情報源3選!
弊社が運営するマーケティング・データ・バンク(MDB)でも、メンバー企業様からカーボンニュートラル、脱炭素に関する調査相談を数多くいただいております。ここでは、弊社の情報コンサルタントが厳選した「カーボンニュートラルの取り組み」に関するおすすめ情報源を3つ紹介いたします。
おすすめ情報源① 世界の脱炭素・カーボンニュートラル動向
世界の脱炭素・カーボンニュートラル動向 JETRO
https://www.jetro.go.jp/world/carbon_neutral/
日本貿易振興機構(JETRO)が世界の脱炭素、カーボンニュートラルに関する政策動向や企業の取り組み事例をまとめて紹介しています。最新の海外動向を知るのにおすすめです。
おすすめ情報源② カーボンリサイクルCO2削減関連技術・材料市場の現状と将来展望 2022
カーボンリサイクルCO2削減関連技術・材料市場の現状と将来展望 2022 富士経済 2022.7
富士経済が発刊しているカーボンリサイクル、CO2削減関連市場についての調査レポートです。CO2 分離技術や分離に使われる材料、大気中のCO2を削減する手法であるCCS(二酸化炭素回収貯留)や、分離、回収したCO2を利用したEOR(原油増進回収法)といった利活用分野の市場規模や参入企業、技術ロードマップなどが掲載されており、特に市場規模については2050年までと、長期の予測がたてられています。
カーボンニュートラルに取り組むうえで、どのような技術があり、どの技術が今後伸長していくのかおさえるのに最適です。姉妹版として2021年9月に発刊された、「CO2利活用ビジネスにおけるグローバル市場の現状と将来展望2021」では、CO2の利活用ビジネスに参入している企業の動向がまとめられているので、合わせて見ていただくことをおすすめします。
おすすめ情報源③ 2023 CSR企業総覧 ESG編
2023 CSR企業総覧 ESG編 東洋経済新報社 2022.11
東洋経済が毎年発行している、企業CSR活動についてまとめられた資料になります。主要1,702社の環境活動に関する取り組みやCSRの評価格付情報が掲載されており、CO2削減をはじめとした環境活動についてどのような取り組みをしているか、気になる企業の状況を網羅的に確認することのできる資料となっています。
まとめ
今回は、カーボンニュートラル・脱炭素経営の取組の調べ方について解説しました。カーボンニュートラルに向けた取り組みや投資の流れは世界的に加速しており、多くの企業で関心が高まっている分野の為、動向を把握するための情報は多いです。
弊社マーケティング・データ・バンク(MDB)にも関連資料は豊富に取り揃えていますので、もっと詳しく調べたい方や、有益な情報源を知りたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。MDBメンバー企業の方はすぐに調査をご相談いただくことも可能です。
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