
SAF(持続可能な航空燃料)の市場規模は?市場動向の調べ方を徹底解説!
世界的に脱炭素化の要請が強まる中で、航空分野におけるCO₂排出削減策の一つとして「SAF(Sustainable Aviation Fuel、持続可能な航空燃料)」の活用に対する期待が高まっています。
国際航空運送協会(IATA)および国際民間航空機関(ICAO)は、航空分野で2050年までにCO₂の排出を実質ゼロにする長期目標を採択しており、目標達成のためには「革新的な航空機技術の採用」、「合理的な航空運営」と並び、「SAFの利用・増産」が重要であるとしています。
当コラムでは、今後も市場の盛り上がりが予想されるSAFの普及見通しや市場規模など最新の市場動向を把握するための情報収集法について、解説していきたいと思います!
目次[非表示]
- 1.SAF市場の現状
- 1.1.SAFとは?
- 1.2.SAFの市場規模
- 1.3.SAF国産化に向けた企業動向
- 2.SAFの市場動向の調べ方は?
- 2.1.インターネット上のオープン情報から調べる
- 2.2.官公庁統計、業界団体情報から調べる
- 2.3.業界専門情報から調べる
- 2.3.1.調査会社等から調べる
- 2.3.2.専門業界誌・ ビジネス誌を確認する
- 2.4.市場調査会社に新たに調査を依頼する
- 3.SAFの市場を知るためのおすすめ情報源3選!
- 3.1.おすすめ情報源① 経済産業省 分野別投資戦略 参考資料(持続可能な航空燃料(SAF))
- 3.2.おすすめ情報源② カーボンニュートラル燃料の現状と将来展望
- 3.3.おすすめ情報源③ MDB有望市場予測レポート
- 4.まとめ
- 5.関連記事のご紹介
SAF市場の現状
SAFとは?
SAFとは、主に植物などのバイオマス由来原料や廃食油・廃プラスチック等の原料から製造された航空用燃料を指します。化石燃料から生産した従来のジェット燃料と同様に燃焼時に CO₂を排出しますが、原料となる植物が CO₂を吸収するため、原材料の生産から燃焼までのサイクルの中で排出量と吸収量のバランスをとることができ、化石燃料と比べると CO₂排出量の大幅な削減に繋がるとされています。
SAFの市場規模
政府諮問会議「GX実行会議」の下で2024年12月に経済産業省GXグループGX投資促進課などが策定した分野別投資戦略の中で、SAFの国内市場規模は2025年の需要ベースで30万キロリットルと推計されています。2030年には同171万キロリットルまで拡大すると予測され、これは国内のジェット燃料使用量の10%にあたります。
出所)分野別投資戦略(令和6年12月) 経済産業省GXグループGX投資促進課 よりMDB作成
SAF国産化に向けた企業動向
日揮ホールディングスとコスモ石油などが出資するSAFFAIRE SKY ENERGYは2025年4月より国内旅客機向けにSAFの供給を開始し、同年5月1日には、関西国際空港発の日本航空(JAL)便に同社のSAFを混合した燃料が使用されました。供給された SAF は、国際的な持続可能性認証であるISCC CORSIA認証を取得しており、原料から供給まで国内で完結する国産SAFの提供体制が国際的な基準で認められたものとなります。2026年度以降は年間3万キロリットルのSAFを生産し、国内5空港で、JALや全日本空輸(ANA)のほか米デルタ航空やドイツの国際物流大手DHLエクスプレスなどの機材に供給される計画となっています。
その他、ユーグレナや出光興産、ENEOSなど、様々な企業がSAF製造に向けた研究等の取り組みを進めており、各社活発な動向を見せています。
SAFの市場動向の調べ方は?
次に、SAFの市場動向や主要プレイヤー情報、今後の市場予測情報を、自分で収集する場合にどんな方法があるのか?について解説します。
SAFのマーケット情報で重要な市場規模、企業シェア・予測等を調べる方法としては、①インターネット上のオープン情報から調べる、②統計情報から調べる、③専門業界情報から調べる、④市場調査会社に新規調査を依頼する、の4つの方法があります。
インターネット上のオープン情報から調べる
Googleなどのウェブブラウザで「SAF 市場規模」、「SAF 市場動向」、「SAF 事例」などのキーワードで検索すると、多くの記事情報がヒットします。この記事情報を辿っていくと、市場調査レポートの発行元が発表しているプレスリリースや、国や業界団体、シンクタンクが発表している無料の調査報告書が見つかります。これらの情報を見ることで大きな潮流はどなたでも把握できると思います。
官公庁統計、業界団体情報から調べる
信頼できる情報源としては、第一に国の統計があげられます。その次に業界の企業が加盟している業界団体の情報です。該当の統計があれば、そこで市場規模の情報が入手できます。
インターネット等で、SAF等のキーワードで業界団体や関連の官公庁サイトを探し、統計情報があるかを確認、その中にSAFの情報があるかを調べます。
官公庁
経済産業省は、GX実現に向けた投資促進策を具体化する「分野別投資戦略」の中でSAFに関する資料を公開しています。同資料の中で世界および日本国内の需給見通しデータや諸外国の政策動向など情報を整理しており、SAFの市場概観の把握に活用できます。また経済産業省の他、国土交通省などの関連省庁は「持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会」を定期的に開催しており、同協議会HP上で公開されている各会の議事内容や資料の確認は、関連動向把握に繋がります。
業界団体
SAFに関連する業界団体として、定期航空協会が挙げられますが、同協会からSAF市場に関する統計データなどの発表は現状ないようです。ただし、上記の官民協議会には同協会も参加しており、市場動向等についてまとめた資料提出をしていることから、今後HP上で情報発信を行う可能性があります。定期的に同協会が発表する情報をチェックすることで関連動向把握に繋がる可能性があります。
業界専門情報から調べる
調査会社等から調べる
SAF市場に関する市場調査資料は様々な調査会社から市場動向・技術動向をまとめた資料が発刊されています。例えば、富士経済発刊の「カーボンリサイクルCO2削減関連技術・材料市場の現状と将来展望 2024」や「カーボンニュートラル燃料の現状と将来展望 2024」では、SAFの一類であるバイオジェット燃料に関する最新動向と、今後の市場拡大に向けて注目される研究開発やプロジェクト動向、2050年までの将来予測を分析しています。
専門業界誌・ ビジネス誌を確認する
調査会社のレポートに加え、専門業界誌・ビジネス誌をチェックすることで、事例や最近の動向を確認できます。例えば専門業界誌の「月刊油脂」(幸書房)は2025年2月号で「加速するSAFと油脂」のタイトルで特集記事を掲載しており、市場規模データや関連企業動向についてまとめています。その他、「新エネルギー新報」(重化学工業通信社)「MATERIAL STAGE」(技術情報協会)「日経ビジネス」(日経BP社)「エコノミスト」(毎日新聞社)など様々な媒体で不定期に関連特集記事が掲載されるなど、これら専門業界誌・ビジネス誌から最新の動向・企業事例を確認することが可能です。
市場調査会社に新たに調査を依頼する
先に紹介した方法で期待する粒度の情報が入手できなかった場合、また情報が多すぎて取りまとめるのが難しい場合には、市場調査会社にアドホック調査を依頼するという選択肢もあります。公開情報を幅広く集めて、整理・分析するということに加え、有益な情報を保有する業界関係者・有識者等を探索し、インタビューを通してオリジナルな情報を収集し報告する形式をとっており、一般では取得が難しい情報にリーチできる可能性があります。
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SAFの市場を知るためのおすすめ情報源3選!
弊社が運営するマーケティング・データ・バンク(MDB)でも、メンバー企業様からSAF市場に関する調査相談を数多くいただいております。ここでは、弊社の情報コンサルタントが厳選した「SAF市場」に関するおすすめ情報源を3つ紹介いたします。
おすすめ情報源① 経済産業省 分野別投資戦略 参考資料(持続可能な航空燃料(SAF))
分野別投資戦略 参考資料(持続可能な航空燃料(SAF)) 2024.12 経済産業省GXグループGX投資促進課
https://www.meti.go.jp/press/2024/12/20241227006/20241227006-9.pdf
先にもご紹介しましたが、情報源として経済産業省の分野別投資戦略は外せない情報源です。SAFの国内外需要見通し、諸外国の政策動向など関連情報が整理されています。SAF市場の全体概況を把握するうえでは、非常に有益な情報源になります。
おすすめ情報源② カーボンニュートラル燃料の現状と将来展望
カーボンニュートラル燃料の現状と将来展望 2024 2024.01 株式会社富士経済
https://www.fuji-keizai.co.jp/report/detail.html?code=162307805&la=ja
株式会社富士経済は、カーボンニュートラル燃料として自動車や船舶、航空機などのモビリティ分野や、各種産業の熱需要、火力発電所などでの脱炭素化の重要な選択肢となる代替燃料の市場調査レポートを発刊しています。同レポートはSAFの一類であるバイオジェット燃料の市場規模、予測、注目企業動向などがまとまっているおすすめの情報源です。
おすすめ情報源③ MDB有望市場予測レポート
SAF(持続可能な航空燃料)-MDB有望市場予測レポート 2024.6
マーケティング・データ・バンク(MDB)では、近年ますます注目度が高まるSAF(持続可能な航空燃料)をテーマとした「MDB有望市場予測レポート」を発刊しています。SAFの市場規模推移・予測、市場シェア、主要プレイヤー別動向など市場概観がまとまった調査レポートとなっており、マーケティング分析をする際に参考になる情報源となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、SAFの市場動向の調べ方について解説しました。様々な業界に拡大していくこの市場は、今後ますます目が離せなくなっており、情報収集の重要性が増してきています。
弊社マーケティング・データ・バンク(MDB)にも関連資料は豊富に取り揃えていますので、もっと詳しく調べたい方や、有益な情報源を知りたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。MDBメンバー企業の方はすぐに調査をご相談いただくことも可能です。
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